「情けは人の為ならず」という有名なことわざ。

このことわざを自ら使ったことはないにしても、日本人であれば一度は必ず耳にしたことはあると思います。

この言葉の意味を問われた際、
「情けをかけるとその人のためにならない」
といった解釈をされている方を少なからず見かけますが、これは誤りです。

これは、情けは人の為にならないという意味ではなく、人に情愛や思いやりを掛けると、巡り巡って鏡のように自分に良いことが返ってくるという意味です。

一般的に「情け」というと「同情」という意味合いが強いですが、古語の「情け」には「情愛」や「思いやり」といった意味があります。
また、「ならず」には「~ではない」という打ち消しの意味があります。
「人のためならず」を読み解くと、「(他)人のためではない(自分のためである)」といった意味になるのです。

この流れはおおよそ仕事も同じことだとつくづく思います。

相手の為に一生懸命仕事をすれば巡り巡って自分にもプラスになって返ってきます。
それは仕事の大小は全く関係ありません。
一見誰もやりたがらない雑務かと思われる仕事でも同じことです。


仕事には必ず相手がいます。

どんな仕事でも一度相手のことを考え、その相手のために一生懸命やってみると、それは相手もプラスになり、巡り巡って自分にもプラスになっていきます。

「自分のためではなく、人のために動く。」
というのは一朝一夕で身につくものではありませんが、この正しい意味合いでの「情けは人の為ならず」の精神を、是非この機会に実践してみてはいかがでしょうか。
また、この精神を他の若い世代にも早くに身につけさせ、誰でも第一に人のために動ける関係性を築けると、各自が自主的に行動できる素晴らしい会社になると思います。


もう一つ、後輩の育成ということに重点を置いて、日本の社会人であれば、という馴染みのある言葉を使ったお話をここでさせていただきます。

社会人に必要なこととしてよく、「報告」「連絡」「相談」のそれぞれの頭の文字をとって、
「報連相(ほう・れん・そう)」
が大切と言います。皆さん一度は聞いたこと、学んだことありますよね。

しかし、最近になって、ビジネスの世界では成長を妨げるような「報連相(ほうれんそう)」が多いと言われ始めています。

もちろん「報連相(ほうれんそう)」には組織の上下をつなぐ重要な意味を持っています。
しかし、ある程度仕事が出来てくるようになると、自分で考えて行動しなければならない場面が頻繁に起こりえます。

「仕事がうまく進まないときには早めに相談すればいい。」
「相談すれば上司がなんとかしてくれる」

ということではなかなか人材が育ちません。
いわゆる「指示待ち人間ばかり」になる可能性があります。

そこで新しく、
「確・連・報(かくれんぼう)」
という言葉を伝える会社が増えています。

「報連相(ほうれんそう)」の「相談」を確認に置換えた言葉になりますが、「相談」より「確認」するということのほうが、「自主的人間」を育てることにつながるのではないかということです。

「このやり方にすると結果はもっとよくなると思います。
このやり方を採り入れていいですか」などと「確認」し、途中経過を連絡、そして結果を報告することが人を育てる最善な方法だと思います。

頭ごなしに正解を伝えることは一番楽で手っ取り早い方法ですが、この「確・連・報(かくれんぼう)」を若い世代から身につけさせ、また更に新しい世代へと繋げていけると、各自が自主的、リーダーシップを取れるような会社になるのではと思います。